世界を魅了するパティシエ大塚陽介氏が語る、本質的な美味しさとカフェレートの可能性

世界を魅了するパティシエ大塚陽介氏が語る、本質的な美味しさとカフェレートの可能性

2025/01/28

世界大会で二度の優勝経験を誇り、日本の洋菓子業界を牽引するパティシエ、大塚陽介氏。

辻口博啓シェフのもとで修業を積み、京都や箱根の名店で腕を振るった後、2023年に東京・三軒茶屋にジェラートショップ「YAYOI TOKYO(ヤヨイ東京)」をオープンしました。屋久島の天然水や厳選された素材を使用し、細部にまでこだわった美しいジェラートで訪れる人々を魅了しています。

そんな大塚氏が手掛けた、「カフェレート - 食べるコーヒー - 」とのコラボレーション。その背景にある想い、そしてカフェレートの新しい可能性についてお話を伺いました。

パティシエを志すきっかけは「人生を表現した一皿」との出会い

―パティシエを目指すきっかけについて教えていただけますか?

きっかけは、辻口博啓シェフの作った『セラヴィ』というケーキとの出会いです。『セラヴィ』はフランス語で“人生”を意味するのですが、そのケーキを食べたときに、美味しいを超えた感動を覚えました。それまで、スイーツは美味しければそれで十分だと思っていました。でも、『セラヴィ』は、酸味や甘さといった味わいと、“酸いも甘いも経験する人生”というストーリーを重ね合わせて作られていたんです。そういう概念があるということに感動しました。

今ではストーリー性を持った料理やスイーツはガストロノミーの世界では一般的ですが、当時の私にとって、そういった考え方を身近な場所で体験できたのは非常に衝撃的でした。それが、パティシエを志す大きなきっかけとなりました。


日常に寄り添うスイーツを届けたい―「YAYOI TOKYO」立ち上げの想い

―「YAYOI TOKYO」を立ち上げたきっかけや経緯を教えてください。

これまで、商品開発やコンクールなどを通じて多くの経験を積んできました。その中で、次のフェーズに進むにあたり、どんな心情を持って取り組むべきかを改めて考えたんです。ただスイーツを販売するだけでなく、そこに“意義”を込めたいという思いが湧いてきました。

幸せというのは、何か特別なところにあるというよりも、普遍的な何気ない日常に寄り添ってあるものなんじゃないかなって思うんですよね。それで、特別なデザートではなく、日常に寄り添ったジェラートやアイスクリームに重点を置きたいと思い、『YAYOI TOKYO』を立ち上げました。また、そうした価値観を日本だけでなく、世界に広げていきたいという想いを込めて、屋号に“東京”を入れています。


―お店ではさまざまなスイーツを提供されていますが、アルコールとのペアリングも特徴的です。メニュー考案において大切にされていることを教えていただけますか?

アルコールとのペアリングを提供している背景には、渋谷のバー『石の華』のオーナーバーテンダー石垣忍さんとのコラボレーションがあります。私たちは“アルコールとスイーツのペアリング”をテーマにした『PLAYGROUND』というユニットを組んでいるのですが、石垣さんは「ペアリングは単に足りないものを補うのではなく、互いに高め合いながら新しいストーリーを生むものであるべき」という信条をお持ちです。その考え方を勉強させていただき、私自身も大切にしています。

―では、カフェレートとの出会いについて教えてください。

先ほどお話ししたペアリングユニットでの作品の中で、サントリーさんのアルコールを使用したものがあります。その制作過程で、サントリーさんのものづくりへの信頼が、自分の中で芽生えてきました。そんな中、サントリーさんの社内ベンチャーで企画され、コーヒーの素材へのこだわりや高い技術力を踏襲したカフェレートという新しい素材に出会い、純粋に興味を惹かれたというのがきっかけです。


―今回、カフェレートとのコラボ商品を2つ手掛けていただきましたが、コラボメニューの開発において、特に工夫された点を教えてください。

カフェレートという素材は、ドリップコーヒーでは引き出しきれない美味しさを持っています。これをどう活かすかがポイントでした。

コーヒーには多様なアロマがあります。たとえば、ナッツやキャラメルのような甘い香り、柑橘やベリーといったフルーティーな香り、さらには核果を思わせる芳醇な香りなど、幅広い香りが楽しめます。私自身コーヒーの専門家ではありませんが、このアロマの多面性を最大限に引き出して、召し上がる方にその豊かさを楽しんでもらえるようなプレゼンテーションを心掛けました。


「本質的な美味しさ」の追求

―「YAYOI TOKYO」とカフェレートという素材の相性について、どのように感じられていますか?

『YAYOI TOKYO』は、何よりも“本質的に美味しい”ということにこだわっています。小手先だけでなく、素材そのものが持つ力や美味しさをしっかり活かすことを心掛け、その中で少し新しいエッセンスを感じていただけるように工夫しています。それは、カフェレートの「美味しさを追求する姿勢」とも共通している部分かと思います。

あと、意義的な面でも共感できる点が2つあって、1つはフードロス問題です。

私たちはジェラートを作る際に、B級品とされて市場に出回らないフルーツなどを活用することがあります。これは安いからという理由ではなく、生産者さんの助けになるということや、見過ごされがちな素材が実はとても美味しいということがあるからなんです。カフェレートも同様に、ドリップコーヒーでは使い切れない部分を活かして、より美味しい素材へと昇華させているという点に共感を覚えます。

2つ目は、チョコレートやカカオの高騰に関する部分です。特にここ数年でカカオの価格が2倍近く上がり、菓子業界全体が影響を受けています。その中で、カフェレートは新しい選択肢となる可能性を持っています。ただ、“代替品”と呼ぶのが申し訳ないくらい、新しい美味しさや可能性を秘めた素材であり、この点も大きく共感できる点です。

―今後、カフェレートを使って挑戦してみたい新しいスイーツやアイデアはありますか?

現在、パフェやボンボンショコラでカフェレートを使用していますが、さらに広い可能性があると感じています。具体的には、ドリンクやスイーツだけでなく、料理の分野でも活用できるのではないかと考えています。最近では、パティシエも塩味のある料理やデザートに挑戦することが増えてきました。そこで、カカオが料理に取り入れられてきたように、カフェレートも料理の分野に進出して、新しい使い方を提案できるのではないかと思っています。


―最後に、コラボ商品において、こだわった点や工夫された点をお伺いできますか?

今回のコラボでは、カフェレートの持つ多面的なアロマや味わいをどう伝えるかを考えました。その中で、一つテーマにしたのが『アフォガード』です。

アフォガードというと、アイスクリームにコーヒーをかけて楽しむデザートですが、この“自分自身でかける”という行為によって、新しい味わいを生み出す楽しみがあります。それを発展させて、カフェレートやその他の素材をお客様自身でかけていただくことで、カフェレートとのマリアージュを体験してもらえるプレゼンテーションを目指しました。


―コラボメニューを多くの方に体験いただけることを、わたしたちも楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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